今年も東京ドキュメンタリー映画祭が今週末から始まります。この映画祭は、大袈裟に聞こえるかもしれませんが、私の人生を変えた場所です。私の映画『Yokosuka1953』は、この映画祭で長編部門グランプリを受賞し、それが大きなきっかけとなって劇場公開へとつながりました。あれは2021年12月のことでした。
『Yokosuka1953』は、2018年8月4日に届いた一通のFacebookメッセージから始まった作品です。1947年、戦後混乱期の横須賀に「混血児」として生まれた木川洋子。激動の時代の中でアメリカへと養子に出され、バーバラとなった彼女。にバーバラの娘、シャーナから「木川信子を知っていますか?」と問い合わせを受けたこと。それがすべての出発点でした。
それから劇場公開、書籍出版を経て、気づけばもう七年が経ちました。その間に、多くの方が亡くなられました。
木川信子さんの一歳年上で、信子さんの姉と同級生だった天都カネ子さん。バーバラさんに会った瞬間に抱きつき、「生きてるってすごいね」と語った姿が忘れられません。そして、横須賀地域研究の大家である辻井善弥先生。お二人から伺った数々の昔話を、もう聞くことはできません。
さらに、映画の完成後、映画祭や上映活動で支えてくださった二人の方も、今年相次いで亡くなられました。
一人は、札幌のマイクロシアター「サリサリ市場」代表・坂口きりこさん。『Yokosuka1953』を深く愛し、何度も上映の機会をくださり、北海道の多くの方に紹介していただきました。闘病で苦しい状況の中でも、今年の北海道大学での上映時も、下北沢K2での上映時も、病室から上映情報をシェアしてくださいました。サリサリ市場のあたたかな空間、上映後にビールを飲みながら交わした会話を、今も鮮明に覚えています。

もう一人は澤山恵次さんです。澤山さんは東京ドキュメンタリー映画祭のスタッフで、2021年の上映時には舞台挨拶で聞き手を務めてくださいました。その後もロビーでお会いするたびに優しく声をかけてくださり、穏やかに映画を語る姿が印象的でした。京都・金閣寺近くのご出身と伺い、私の故郷とも近く、勝手に親近感を抱いていました。

今年2月、私がプログラムディレクターを務める熊谷駅前短編映画祭にも審査員としてお越しいただき、懇親会でも温かい時間を一緒に過ごしました。
本当に、多くの方に支えられた映画でした。そんな折、東京ドキュメンタリー映画祭から連絡がありました。澤山さんが愛した映画を再上映する企画を立てているとのこと。その作品のひとつとして『Yokosuka1953』を選んでいただきました。
人生というのは、自分の力だけで切り拓くものではありません。誰かに選ばれ、支えられることで初めて動き出すものだと、あらためて感じています。坂口さん、澤山さんがいなければ、この映画がここまで広がることはなかったでしょう。本当に、ありがとうございました。
今週末、東京ドキュメンタリー映画祭の特別上映として、12月7日16時15分よりK’s cinemaで『Yokosuka1953』が上映されます。澤山さんと過ごした劇場です。最近は、舞台挨拶のある上映では作品を見ないようにしていました。自分の感情が昂りすぎて、上映後に言葉が出なくなることが多かったからです。しかし今回は、澤山さんを思い、同じ劇場で『Yokosuka1953』を一緒に観たいと思います。そして、松崎まことさんとともに、澤山さんを偲ぶ時間を持つつもりです。
もしよろしければ、劇場にお越しください。

天都カネ子さん。いつも笑顔で迎えてくださり、ありがとうございました。一緒にお酒を飲んだ時間は、私にとって本当に大切な思い出です。激しい時代を生き抜いてこられたその強さから、私は多くを学びました。ありがとうございました。
辻井善弥先生。多くのことを教えていただき、ありがとうございました。「あの頃のことは語り継ぎたくないけれど、語り継がなきゃいけないのかな」という先生の言葉は、その後も私の中でずっと残り続けています。この言葉の意味を今も考え続けています。深い学びを、本当にありがとうございました。
坂口きりこさん。初めてお会いしたのは夕張ファンタスティック映画祭でしたね。突然サリサリ市場を訪れた私を温かく迎えてくださり、『Yokosuka1953』を観て上映を決めてくださったこと、心から感謝しています。大変な体調の中、映画のために役所を回り、チラシを多くの場所に置いてくださり、その後もずっと応援してくださいました。会えなくなってしまったことが、本当に寂しいです。ありがとうございました。
澤山恵次さん。後から知りましたが、同郷だったのですね。きっと北野天満宮や天神堂など、共有する記憶の風景があったのだと思います。東京ドキュメンタリー映画祭では、まだ評価が広く届いていなかった『Yokosuka1953』を大切に扱ってくださり、緊張していた舞台挨拶でも支えていただきました。シアターセブンでの映画祭のあの日、寒空の下でホットワインを飲みながら語り合った時間は、忘れられない思い出です。体調が優れない中、熊谷にも来てくださり、ありがとうございました。もっと映画の話をしたかったです。『Yokosuka1953』を愛してくださり、心より感謝いたします。
木川剛志

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